慢性痛と「うつ」の関係。
全国1700万人の慢性痛持ちの方、どうもです。
慢性痛の方と話していると、「うつっぽいなぁ」と思うことがけっこうあります。
これは決して「うつ病である」という意味ではなく、抑うつ気分と考えます。
やる気が起きない、気分が落ち込む、頭が働かない、行動に移せない。これらが抑うつ気分の症状と言われています(Wikipedia参照)。精神的に落ち込んでいる方は話している時のキーワードとして「痛くてやる気が出ない、痛くて気分が落ち込む、痛くて行動できない。」といったものがよく出てきます。
痛みそのものによって、抑うつ気分が作られてしまうんです。
この症状は脳のイメージング研究(fMRIなどによる脳の活動検査)によってわかっています。
うつ病の場合、背外側前頭前野(DLPFC)という部分の血流が低下することがわかっています。
対して、慢性痛の場合も背外側前頭前野(DLPFC)の活動低下、容積減少が報告されています。
慢性痛のある状態とは、脳にとってはまさしく「うつ状態」なんです。
慢性痛の治療では「認知行動療法」という心理療法の分野の治療が非常に効果があることがわかっています。
これは上で話したように、慢性痛の脳は「うつ状態」だからにほかなりません。だから心理療法が効果があるんですね。
痛い部分に原因があると思い込んでしまうケースも多々あるんですが、実際に脳が痛みを作るとテレビでしきりに言っている意味はここにあります。
慢性痛の脳は活動量が低下している状態ですから、脳を活性化させることで痛みを軽減させられます。
脳を活性化させる最も簡単な方法は、「行動する」「動く」ということなんですね。ぶっちゃけ言えば、脳トレするより歩く方が脳にとっては良いんですね。
運動による鎮痛効果は軽度の運動、ウォーキングなどでも効果があることが分かっています。運動習慣をつけることで痛みは確実に減ります。
地道に続けることで自信をつけることで痛みは減ります。
不思議ですが、ホントの話です。
運動は痛みを感じにくくさせるんだって。
全国1700万人の慢性痛持ちの方、どうもです。
日本では「痛み=整体や鍼、マッサージ」といった受け身治療が中心となってきました。僕がいる理学療法業界でも「痛み=徒手療法」と考える人が多いです。
これは世界的に見るとあまり常識的ではありません。2000年に入ってから様々な慢性痛のガイドラインが公表されてきました。基本的に推奨されるのは運動で受け身治療は最小限に留めた方が良いという考えが主流です。
運動そのものが痛みの感受性を低下させる、という研究結果がいくつか出ています。痛くない場所を動かすだけでも、痛みを減らす効果が出るようです。また、痛い所を動かしても痛みを減らす効果はほとんどみられなかったそうです。
先日こられた80代女性の方、左の外くるぶし痛。診断名は「変形性足関節症」
背骨の運動療法を指導して次の来院では「まだ痛いけどずいぶん痛みが減ってきた」とおっしゃっていました。
基本的に痛みのある方は背骨を中心とした動作が下手になっています。背骨とは身体の中心です。身体の中心に力が入らないと、末端に負担がかかってきます。
痛くない場所を動かすことによる鎮痛効果とともに、背骨の動きを改善することで負担がかからない身体を作っていく。運動で痛みを減らす仕組みです。
というわけで、慢性痛の場合は痛い所にこだわりすぎずに全身運動のウォーキングやストレッチが自分でやるには良いですよ。
僕ら理学療法士が個別に評価して指導する「管理された運動療法」「スーパーバイズドエクササイズ」は痛み治療においては最も推奨される「エビデンスグレードA」になっています。
痛みは整体でなくエクササイズで良くなる
僕は理学療法士として、ペインクリニックでリハビリテーションを行っています。
そもそもどういう仕事なのか。
基本的に運動をしてもらっています。痛みに対して運動?と思う方もいると思います。
今日はそのへんのお話をしようかと。
痛みのアプローチ=徒手療法・整体という認識が日本では常識ですが、ヨーロッパやアメリカでは非常識です。
実は、世界的に慢性痛の効果が認められているのは、整体手技ではなく「運動」なんです。どの国の診療ガイドライン(医療関係者が参考にする研究データベース)でも、運動は痛みへの有効性が書かれており、逆に整体手技に関しては「やってもいいけど、回数を決めて短くお願いね」と書かれています。
日本は伝統的に鍼や整体が盛んですし、鍼灸師や柔道整復師など国家資格としても定められてます。理学療法の分野にも徒手療法学会が強い力を持っています。
そういう事情もあって「痛み=体を動かす」ではなく「痛み=受け身治療」というイメージがあまり浸透していません。
科学的根拠に基づいた痛み治療は、基本はセルフメディケーション、自分で痛みと向き合って治療していく、です。
医療者はそのサポートとして存在する。この考え方が基本になっています。
痛みとの向き合い方、身体との向き合い方を教えるのが僕らのお仕事なんですね。
僕のアプローチは痛みがある方だけでなく、予防やアンチエイジング、スポーツを長く楽しみたい、と考える方にも非常に有効です。
背骨の潜在力を引き出して、無理なく体を動かすことで筋トレやスポーツをしていなくても身体の機能は保てます。
先日は、そういったお話を埼玉でさせていただきました。
なかなか好評で「こういったメニューを受けたい!」とのご要望もいただいて、本当にありがたいです。
今年中には準備をしていきたいと思いますので、もう少々お待ちいただければと思います。
「痛みには運動!」全国に広げていきますね。
「○○するべき」に縛られてしまう
ぎっくり腰を早く痛みを減らす方法 その1~腰椎硬膜外ブロック~
どうも、身体を哲学する男、ヨシバです。
今日の話題はぎっくり腰です。
僕自身も何度もぎっくり腰をしたことがあります。あれ、けっこう辛いですよ。初めてなった瞬間がまたなんともかっこわるいんで言いたくないんですが…。
聞きたいですか?
聞きたくなくても言いますね。
四つ這いでコンセントからプラグを抜こうとしてなりました。
・・・
・・・・・・
はい、かっこ悪いですね。でもなったことがある人に話すと「わかるわー!」ってなります。
僕の務めるクリニックにも、よく来院されます。ペインクリニックなのにぎっくり腰?と思われるかもしれませんが。うちにぎっくり腰の方が来るのは、主に整形外科も標榜しているからってのもありますけどね。
実はぎっくり腰にはペインクリニックで行われる「腰椎硬膜外ブロック」がかなり効きます。
ただし、この「効く」は僕個人の感想・印象であって科学的根拠が必ずしもあるわけではないので、そのあたりはご注意ください。
どのくらい効くかと言うと、初発(初めてぎっくり腰になりましたの方)であれば6割くらいはその場で痛みが1/10くらいになります。残りの4割も2日くらいでほぼ1/10になります。
これって結構すごいことです。でも、ぎっくり腰を繰り返している人には効き目がだんだん落ちてきます。効かないわけではないですよ。
大体は「急激な痛みはとれたけど、慢性的な痛みは残ってる」と言います。
つまりはですよ、この「腰椎硬膜外ブロック」は、急性期の痛みにはめっちゃ効きますが、慢性的な痛みに対しては効果が限定的と言えます。
うちのクリニックでは多くの場合、リハオーダーが一緒に出るので、主に生活上の注意点と簡単な運動指導をして初回で終了になることが多いです。慢性的に繰り返している方には継続して対応します。
なぜ初回で終わるかと言えば、いわゆるぎっくり腰、医学用語では「急性期の非特異性腰痛」と言います。こいつに関しては、「90%が6週間以内に軽快する」要するに9割の人は1か月半以内に何もしなくても治りますよ、ということです。
このブログでは繰り返していますが、「無理のない範囲で運動したほうが痛みは早く良くなる」ので、リハビリテーションオーダーが出た場合は、この説明をまずします。その後、屈んで痛いのか、反って痛いのかなど、身体の状況をみて運動指導をして終了です。
ハッキリ言って、同じ5000円払うなら整体で当たりはずれのある施術を受けるよりも、リスクも少なく効果があると思いますね。
今日はこんな感じです。運動も大事なのでそういった話も今後しようと思います。
痛いから動かさないように→それ、逆に悪くしてますよ。
どうも、フィジオフィロソフィストのヨシバです。
こういう方、けっこういらっしゃいます。
「痛いから、動かさないようにしている」
「動かすと痛いから、あまり使っていない」
これ、逆に痛みを悪くします。
動かさないように、というのは「安静および活動制限」になります。この安静および活動制限は慢性疼痛の診療ガイドラインに書いてある推奨度からすると、
Dランク(行わないように推奨される、もしくは悪化するリスクが高い)
に分類されています。
つまり、「痛いから動かさない」というのは、自分で自分の痛みを悪化させているんです。
動かしたほうが良いです、絶対に。逆に運動療法は、
Bランク(行うことが推奨される)
に分類されています。
運動したほうが良いということは、すでに統計的に証明されています。
では、最も推奨されるAランク(行うことが強く推奨される)のは何か。
・集学的治療(運動療法と薬物治療、心理療法、神経ブロックなどを組み合わせること)
となっています。
自分でもまずやれそうなのは、安静を避ける事と有酸素運動をすることです。
これだけでも痛みはかなり変わってきます。
その怒りは誰に向かっている?
どうも、フィジカルフィロソフィストのヨシバです。
痛みが長く続いていると怒る人、います。
何かに対して怒りを感じている。でも、その何かってなんでしょうか。
怒りには、おおむね2種類があって、健全な怒りとそうではない怒りがあります。
まずは、自分に対して怒っている人。
例えば、痛みが治っていかない自分であったり、仕事で他の人に迷惑をかけていることだったり、家の中での役割ができないことに怒っている人です。
怒りの本当の矛先が自分に向いている人です。
割とこのタイプの人は良くなります。良くなるし、数回のリハビリで軽快することが多いです。
もう1つ、医療者としてはちょっとやっかいな怒りの種類が他人や過去の出来事に怒りを向けてしまう人です。
例えば、「事故のせいで私はこんな目にあっている」「あの医者が正確な診断をしてたらこうはなっていなかった」などと怒りの対象を自分以外の何かに向けている人です。
自分を守るために、他の人に攻撃してしまっている状態です。
これの何がやっかいかと言うと、他者の協力を拒んでしまったり、他者を悪者にすることで自分を保ったりしている場合があるからです。治ることを自ら拒んでしまうようなふるまいをしてしまうことがあります。
怒りというのは、防衛本能なわけです。自分の領域を侵す刺激に対して攻撃的な反応をする。だから、一度その怒りが何に向かっているか、真剣に考えてみる必要があると思います。
例えば、僕の場合は家事をしている時によく怒っていました。
ふと気づいて考えてみると「家事をめんどくさがっている自分に対して怒っていた」んです。
面倒だけど、やらなくちゃいけない。家事を面倒くさがるなんてひどい人間だな、と自分に対して怒っていたんです。
でも、同時に「料理をすることが好きなんだ」ということにも気づきました。・
そうなってからは、ずいぶん怒ることが減ったんです。
あぁ、自分に対して怒っていたんだなと。
めんどうくさがりな自分も理解することで感情に変化が出てくるんですね。
ここは1つ、自分の怒りの矛先をしっかり確認しましょう。