シン・治してなんぼ

痛みに特化した治療に携わっている医療関係。非常識はびこるネット情報の一時の安らぎになれるように書いていきます。

説明と同意

 セルフトレーニングをやってくれない、こちらの治療に依存されてしまう。こういった悩みを持つセラピストが多い。
 最後にちょろちょろっと2.3分で「この運動を家でもお願いします」…まぁやらないよね。
それを「あの患者さんは依存傾向があるから」「やる気がない」「メンタルに問題がある」と主観的に評価してしまう傾向があると思います。

 これは説明が不十分な典型的な例です。説明とは相手の行動を変えてもらうためにするもの。説明が不十分だから相手の行動が変わらないと思った方が良いです。
 相手の行動を変えるのも、技術の1つです。普通の人はこちらと信頼関係を形成しようとしてくれます。それに対して十分な説明をして、セルフトレーニングの必要性や行動パターンの変化を促すと、変えてくれます。
 心理社会的要因を疑うのは、身体機能が改善しているのに痛み訴えや日常生活状況が全く変化しない方や、その場では納得しているっぽいのに行動が変えられない方です。1年で数百人以上担当していますが、それに該当するのは4~5人くらいでした。それでもやりようはあるんですが、それはまた別の機会に。

 例えば座位で背部痛(Th5-10)付近の痛みを訴えた方。「もう気持ち悪くて夜も眠れないんです」「このままだと何も手につかない」とやや不安傾向っぽい訴えがありました。背筋を伸ばしてくださいと言うと、肩甲骨内転が過剰に出現する。脊柱機能が低下して、菱形筋の過剰使用、関連痛領域の痛みが出ていました。もちろん菱形筋トリガーポイントもあります。
 「姿勢を保つときにここの筋肉が過剰に使われてしまっています。ここをほぐすと一時的には良いんですが、また時間が経つと戻ってしまいます。この筋肉を過剰に使ってしまうのは、姿勢を維持するお腹や背筋の力が弱くなっていることが疑われるので、そちらの運動を行って自分でコントロールできるように進めていきましょう」
 初回でしっかり評価して、説明をして運動療法をその時間いっぱいで指導しました。それ以降はしっかりセルフトレーニングの継続が図られています。
 理学療法4回、肩甲背神経ブロック2回で痛みはほとんどなくなり、今後は自分で運動を継続していけそうということで終了になりました。

 不安傾向や抑うつ傾向があっても、行動が変わっていけば必ずといっていいくらい変化します。説明する技術があれば信頼関係を築けます。行動も変化してくれます。
 いわゆるマネジメントです。マネジメント能力を高めることの方が、最近の自分の中では徒手療法や運動療法を極めるより重要度が高いです。
 説明する技術、高めていくと理学療法の可能性はもっともっと広がると思うんですよねぇ。