僕は実は医療がキライでした。
理学療法士になってから
「筋緊張が…」
「麻痺が…」
「姿勢が悪いから…」
「筋膜のねじれが…」
セラピストがよく使うこういった言葉がキライでした。
それはなぜか。
原因を言ってるだけで「こういうことがあるからしょうがないよね」という雰囲気を言葉の端々から感じていたから。
僕自身が慢性腰痛で患者側だったとき。
「右足のバランスが悪い」
「頸椎の一番が左に変異してるね」
「腹筋が弱すぎる」
僕が実際に色々な治療を受けていて言われたことです。
これらは確かに今思えば的を得た指摘だと今では思います。
的を得た指摘なのに、僕は全く納得できませんでした。
「じゃあ一体何をどうすればいいんですか!?」
これから僕は何をすればいいのか、全くわかりませんでした。
僕の治療をしてくれた方々はみなさん真摯に向き合ってくれたと思います。
それでも僕は納得できなかった。
医療者ではない状態で、医療者の説明を受けて全く納得できなかった。
彼らは専門用語や自分の見解を自分の言葉で話し、クライアントである僕は何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。
相手に伝わらなければ、説明をしているとは言えません。
だから、僕は痛みや動きの原因を「身体のクセ」として表現し、クライアントにも当事者意識をもって運動療法に主体的に取り組んでもらうことを目指して勉強をしてきました。
もちろん、慢性痛には様々な要因が絡み合っています。
一概にそれだけが原因とは言えないのが現実です。
それを差し引いても、慢性痛の方には特有の動きのクセがあり、痛みの出ている部分に負担がかかっていることが非常に多いです。
その修正をするだけでも、非常に効果があります。
何より効果的なのは、目標を共有できることで患者も当事者意識を持って取り組んでくれます。
しっかりとした説明ができると、「じゃあ、これを家でもやっていけばいいんですね」と自ら行う発言が見られます。
次回に、家でやってみてどうだったのか、生活がどう変化しているかなどを詳細に説明してくれます。
自身の行動で痛みをコントロールできる自信を養ってもらう。
慢性痛治療の現場では「コーピングスキル(問題解決能力)の向上」と表現されます。
運動療法を通じてコーピングスキルを向上させることで、メンタル面にも良い影響が出ます。
運動療法というメソッドを通じて、慢性痛治療の要点である認知行動療法も含めることができます。
慢性痛治療において、リハビリテーションの役割とは身体機能の底上げと生活能力の改善です。
Evidence Based Rehabilitationを考えた時、運動療法をやらずにリハビリテーションセラピストの役割を遂行することは不可能です。
運動療法を極めることで、医療として求められる役割をこなしながら、患者にも感謝される真のセラピストの醍醐味をみなさんにも味わってもらいたいと思っています。